日々雑感

日韓共通の課題ー少子化

 現在、日韓関係が最悪であることは、両国ともに認識している。一方が他方を訪れるときに、「日本に行って大丈夫か」「韓国に行かない方がいいのではないか」と近しい人に心配されるのが、両国の誰もが使うジョークになっている。
 多くの人は、「悪いのは政府対政府の関係であって、人々はそれほど相手に対して悪感情を持っていない」と付言する。その発言の基礎は、両国は究極の似た者同士であり、文化的道徳的慣習的に感情を享有するからだと考えられる。両国の違いを特筆する人もいるが、圧倒的に共通点が多いと筆者は思う。
 今、両国が抱える最大ともいうべき共通の社会問題は少子化である。韓国は、2018年に合計特殊出生率が1を割ったが、本年の速報によると、さらに0.9も下回ることが伝えられている。日本もまた、速報によれば、2019年出生は初めて90万を割ることが明らかである。
 韓国のこの数字は世界最低である。台湾、香港、シンガポールもかろうじて1を上回っている程度であり、日本は昨年1.42であるものの、出産適齢期の女性の減少により、下降線は避けられない。
 少子化現象は東アジア共通であるとともに、ギリシア、イタリア、スペインなどの南欧の問題でもある。最近、ドイツが低出生率のカテゴリーから抜け出した。低出生率は、家族を大切にする文化を持つ、東アジアと南欧において顕著である。そのような社会に対応した政策が行われてきたか。
 日本では、89年の1.57ショック以来、少子化政策に取り組んできたが、初動政策(94年エンゼルプラン)が保育所中心だったので、未だにその域を出ることができずにいる。韓国も同時期に出生率の低下が始まり、アジア危機を乗り越え、V字型回復を図った後の2000年代は著しく低下している。V字型回復以降の、女性の社会進出や結婚観の変化が原因と分析できる。
 韓国では、乳児の社会保育40%を目標にし、多子家庭支援からすべての児童を対象にした支援対策に切り替え、移民政策については、本年スタートした日本より早く規模も大きく、門戸を開いている。しかし、既に、社会保育の拡大が出生率の増加につながらないことを認識し、より大きな社会システムの構築を課題としている。
 韓国の少子化に対する緊迫感に比べると、20年以上も保育中心の、予算の少ない少子化政策を行ってきた日本は猛省すべき時期が来ている。フランスやスウェーデンの家族政策が成功すればそれを模倣しようとしたが、結果は財政難を理由に実現できず、イギリスがワークライフバランスなど家族政策に加え、親の労働も含めた総合的な少子化政策に成功すればそれを模倣しようとしている。しかし、国情の違いは大きく、もはや模倣の段階でないことを知るべきである。
 韓国は人口減少で国が縮小するのを脅威に感じている。だからこそ、文政権は北との統一を焦っているのかもしれない。他方、日本は、出生率の最も高い沖縄県に外交上の犠牲を強要しつつ、出生率の高い原因やそれにつながる政策を分析できていない。
 日本も韓国も、少子化を単発の社会政策ととらえるのではなく、今や国力との関係で、大きな構想、大きな予算を実現しなければ、国は亡ぶ。

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